この記事では、トヨタ(ノア)とホンダ(フィット)の取扱説明書を中心に、各社の公式資料で確かめられたことだけを書きます。車種によって細かな手順や数字は違うので、最後は自分の車の取扱説明書を確かめてください。

スペアタイヤがない車が増えた理由

最近の車は、荷室の床下を開けてもスペアタイヤが入っていないことが多くなりました。代わりに入っているのが、修理剤(パンクした穴をふさぐ液体)と電動の空気入れ(コンプレッサー)がセットになったパンク修理キットです。

タイヤメーカーのTOYO TIREは、理由を軽さと場所にあると説明しています。スペアタイヤは約10kgあるのに対し、修理キットは約1kg。車が軽くなれば燃費がよくなり、空いた場所は荷室に使えます。スペアタイヤは一度も使われないまま捨てられることが多い、という事情もあります。

その代わり、修理キットはどんなパンクでも直せるわけではありません。ここが一番大事なところです。

パンク修理キットで直せるパンク・直せないパンク

トヨタとホンダの取扱説明書は、どちらも同じ線を引いています。

図1/修理キットで直せる場所・直せない場所(トヨタ・ホンダの取扱説明書)
タイヤの断面と、修理キットで直せる場所 タイヤの断面図。接地面(トレッド)にできた約4mm未満の穴は、修理キットで応急修理できる。タイヤの側面(サイドウォール)の傷や裂けは修理できない。ホイールの破損も修理できない。このほか、2本以上のタイヤがパンクしたとき、1本に2か所以上の穴があるとき、約4mm以上の穴のときも使えない。 断面で見た1本のタイヤ ホイール 接地面(トレッド) 約4mm未満の穴 → 直せる 側面(サイドウォール) 傷・裂け → 直せない ホイール 破損 → 直せない 紫の面=直せる場所/点線・灰色=直せない場所

このほか、2本以上のタイヤがパンクしたとき、1本に2か所以上の穴があるとき、タイヤがホイールから外れているときも使えません(トヨタ・ホンダの取扱説明書)。

つまり、釘やねじが接地面に刺さった程度の小さな穴が、修理キットの守備範囲です。縁石にこすって側面が裂けた、穴が大きい、ホイールが曲がった、という場合は修理キットでは直せないので、後で書くロードサービスを呼びます。

刺さっている釘やねじは、トヨタ・ホンダとも抜かずにそのまま修理キットを使うよう書いています。抜くと穴が広がるためです。

パンク修理キットの使い方(手順)

流れは、どのメーカーでもおおむね同じです。ここではトヨタの例で、パンクしてからお店に着くまでを並べます。

図2/パンクしてからお店に着くまで(トヨタ ノアの取扱説明書の例)
パンク修理キットを使うときの手順 手順は5段階。1、安全な場所に止めてハザードランプを点け、必要なら停止表示器材を置く。2、修理剤をタイヤに入れる。3、コンプレッサーで指定の空気圧まで空気を入れる。4、修理剤をなじませるため、すぐに約5km、時速80km以下で走り、止まって空気圧を確かめる。5、その後は約100km以内、時速80km以下で、すぐに販売店やタイヤ店へ向かう。 1 安全な場所に止める ハザードを点け、必要なら停止表示器材を置く ↓ 2 修理剤をタイヤに入れる 刺さった釘やねじは抜かない ↓ 3 指定の空気圧まで空気を入れる 空気圧は運転席側に貼られたラベルを見る ↓ 4 すぐ約5km走り、空気圧を確かめる 時速80km以下。修理剤を中でなじませるため ↓ 5 約100km以内・時速80km以下で店へ

空気がいつまでも指定の空気圧まで上がらないときは、穴をふさげていません。トヨタは25分、ホンダは10分入れても上がらなければ応急修理できないとしています。走らずに販売店やロードサービスへ連絡します。数字は車種で違うので、自分の車の取扱説明書で確かめてください。

修理したあとに走ってよい速度と距離は、メーカーで書き方が違います。

項目トヨタ(ノア)ホンダ(フィット)
直せる穴接地面の4mm未満接地面の約4mm未満
修理直後約5km・時速80km以下で走り点検10分または5km走り点検
その後約100km以内・時速80km以下高速道路は時速80km以下

出典:トヨタ ノア(現行の取扱説明書)・ホンダ フィット(2020年モデル)の取扱説明書(2026年10月25日確認)

どちらも、修理キットは「お店までたどり着くための応急処置」という扱いです。直ったと思ってそのまま乗り続けるものではありません。

手順2・3では、修理剤のボトルをコンプレッサーにつなぎ、コンプレッサーの電源を車のアクセサリーソケット(シガーソケット)からとります。トヨタ・ホンダとも、エンジンをかけた状態で作業します。ホンダは、雪が降っているときや雪が積もった場所ではエンジンをかけたままにしないよう注意しています。

高速道路でパンクしたら

高速道路では、修理より先に身の安全です。NEXCO西日本は、故障や事故で止まったときの行動を次のように案内しています。

  • ハザードランプを点け、できるだけ路肩に寄せて止める
  • 発炎筒や停止表示器材(三角表示板など)で、後ろから来る車に知らせる
  • 同乗者も含めて、ガードレールの外など安全な場所へすぐ避難する

停止表示器材を出すのは、マナーではなく法律上の義務です。道路交通法第75条の11は、高速道路の本線や路肩などで車を運転できなくなったとき、故障などで止まっていることを表示しなければならない、と定めています。

高速道路の路肩でのタイヤ作業は、後ろから来る車にはねられる危険があります。無理に自分で直そうとせず、ロードサービスを呼ぶのも立派な選択です。事故なら110番、落下物など道路の異状は道路緊急ダイヤルの#9910(国土交通省・24時間受付。夜間や休日は対応に時間がかかることがあります)へ連絡します。

パンク修理キットの使用後にやること

修理キットで走れるようになったら、できるだけ早く販売店かタイヤ店に持ち込みます。その先は次の3つです。

1. タイヤを修理するか交換するかを決めてもらう
トヨタ・ホンダとも、応急修理のあとの扱いは販売店で判断してもらうよう書いています。修理剤が入ったタイヤを修理できるかどうかは、穴の場所や状態で変わります。

2. バルブを新しくする
トヨタの取扱説明書は、応急修理キットを使ったあとはタイヤのバルブを新品に交換するよう書いています。

3. 修理剤を買い直す
修理剤は1回使うとなくなります。次のパンクに備えて、販売店などで新しいボトルを用意しておきます。

タイヤを交換することになった場合の費用の目安や、交換時期の見分け方は、タイヤ交換の時期の見分け方と費用で扱っています。

パンク修理キットの期限(使用期限)の確かめ方

ここが見落とされがちなところです。修理剤には使用期限があり、期限が切れたものは使えません。ホンダの取扱説明書と日産の公式FAQは、どちらも期限切れの修理剤は使えないと明記しています。

期限は、修理剤のボトルに書いてあります(トヨタの取扱説明書)。年数は製品ごとに違い、車の取扱説明書には年数そのものは書かれていません。例として、ダイハツの販売店(香川ダイハツモータース)は、ダイハツ純正の修理剤について「使用期限は4年」「2,640円」と案内していました(2020年9月の案内)。

いますぐできること

荷室の床下(またはシートの下など車種ごとの置き場所)から修理剤のボトルを出して、期限を確かめておきましょう。期限が4年の製品なら、新車で買ってから4年で切れます。一度も確かめたことがない人は、いちど見ておくと安心です。

期限は、何年も先のことなので忘れがちです。MobiNoteのAIチャットに「パンク修理キットの期限は2028年5月まで。近づいたら知らせて」のように送ると、期限の少し前に届くお知らせとして登録できます。

直せないときはロードサービス|JAFの料金

側面が裂けた、穴が大きい、修理剤の期限が切れていた、という場合はロードサービスを呼びます。JAFの公式料金は次のとおりです。

区分一般道(円)高速(円)
会員00
非会員・昼21,70025,630
非会員・夜25,63029,540

出典:JAF「ロードサービスの内容と料金」(2026年10月25日確認)。昼は8〜20時、夜は20〜8時。会員はタイヤの応急修理が1本まで・作業30分以内なら無料(部品代は実費)。その場で直せずレッカーで運ぶときは、距離に応じた料金が別にかかります。

自動車保険にロードサービスが付いていることも多いので、JAFの会員でなくても、まず保険証券や保険会社のアプリを確かめてください。たとえばイーデザイン損保は、パンクしたときのスペアタイヤへの交換をロードサービスの内容として案内しています。対応できる作業の範囲は保険会社や契約で違うので、電話で状況を伝えて確かめるのが確実です。

ランフラットタイヤとの違い

スペアタイヤがない車の中には、修理キットの代わりにランフラットタイヤを履いているものもあります。タイヤの側面を補強してあり、空気が抜けても一定の距離を走れるタイヤです。ブリヂストンは、空気圧がゼロになっても時速80km以下で80kmまで走れる(実車試験またはISOの基準による条件)と説明しています。

ランフラットタイヤの車は修理キットを積んでいないことがあるので、自分の車がどちらなのかを一度確かめておくと安心です。

まとめ

  • パンク修理キットで直せるのは、接地面の約4mm未満の穴だけ。側面の傷・大きな穴・ホイールの破損は直せない
  • 使い方は、安全確保 → 修理剤 → 空気 → すぐ約5km走ってなじませる → 空気圧を確かめる、の順(トヨタの例)
  • 修理したあとは速度を控えめに(トヨタは時速80km以下・約100km以内、ホンダは高速道路で時速80km以下)、すぐに販売店やタイヤ店へ。修理か交換かはお店で判断してもらう
  • 高速道路では、停止表示器材を出してガードレールの外へ避難。停止の表示は道路交通法上の義務
  • 修理剤には使用期限がある。期限はボトルに書いてあるので、いまのうちに確かめておく

パンクは何年かに一度のことですが、そのときに修理剤の期限が切れていたら役に立ちません。期限と、タイヤを替えた日を記録しておくと、いざというときに迷わずに済みます。

出典

  1. トヨタ自動車 ノア 取扱説明書「パンクしたときは(応急修理キット)」
  2. 本田技研工業 フィット(2020)取扱説明書「応急修理キット」
  3. 日産自動車 よくあるご質問(タイヤ応急修理キット)
  4. 香川ダイハツモータース 東かがわ店「パンク修理材!」(2020年9月5日)
  5. TOYO TIRE「ON THE ROAD」スペアタイヤとパンク修理キット
  6. 道路交通法 第75条の11(e-Gov法令検索)
  7. NEXCO西日本「高速道路で事故・故障したら」
  8. 国土交通省「道路緊急ダイヤル(#9910)」
  9. JAF「ロードサービスの内容と料金」
  10. イーデザイン損保「ロードサービス」
  11. ブリヂストン「ランフラットテクノロジー採用タイヤとは」